
2020年に発見された最も美しい短編
Cahiers du cinéma
今まで観た 映画の中で最も謙虚で美しい映画かもしれない
Neil Young(キュレーター、批評家)
美しい時代錯誤だというべきか
馬 定延(映像メディア研究者)
手軽さ、早さ、分かりやすさ。利便性こそ正義という現代において、磯部真也は最果ての地にいる。ひとつの事象を長時間かけて眺め、凝縮し、濾過された映像は、実験という言葉ですら足りない。彼は今日も撮っているだろう。そのことを考えるだけで、私はなんだか嬉しくなるのだ。
岩崎 宏俊(映像作家、美術家)
磯部の映画は、いつか最後に観るなら、こんな景色が良いと思わせてくれる。映写室から放たれる、暖かい光の明滅に身を委ねるうちに、遠く、遥かな景色に誘われる。映画に映っているのは、知らない場所のはずなのに、幼い頃に観た景色が思い返される。おかえりなさいと迎えてくれる、いつか、どこかで観た風景。
仲本 拡史(映画監督、現代美術家)
自己主張の強い映画ばかり観ていると、急に磯部さんの作品が恋しくなることがある。そこにあるのは、太陽や食卓や家族などのモチーフに対する一途な眼差しだ。観る度に、全ての芸術作品の根底にあるのは、愛なのだと気付かせてくれる。それは、表現の先端にあって、立ち帰るべき原点でもある。
村岡 由梨(映像作家、詩人)
じっと凝視める、そこに在るものが有るもので無いかもしれない輪郭のその先を、じっっっと、み、詰める(ぎゅっとかも)。意識が遠のくその先をじっっっっっと密、満つ、その先はぎょっと(ぎゃっとかも)する映画。(枠であることももしかしたら重要?)
川添 彩(映画監督)
作家は偏執狂でありながら冷徹な視線を持つべきだということを磯部真也の作品を見て改めて思った。彼のフィルム作品群の驚異的なコマ撮り作業は映像でしか見ることのできない視覚的興奮に満ちているが、技術の映画を超えた豊かな物語のイメージを喚起させる。そのことをこの作家は確信しているに違いない。セリフやシナリオの類型に頼らず映像のみで物語る最近作『ユーモレスク』に新たな創造の可能性を期待させるものがある。
伊藤 高志(実験映画作家)
流れていく光景をそのまま受けとめたい感情と、物語を探して解釈したい感情が交錯する。これらは、詩だ。
三角 みづ紀(詩人)
『ユーモレスク』共存と不在の共存。美しいこの映画にこんな言葉を添えてみる。手作りの納豆をわらから取り出して、出来立ての熱々ご飯を食べる母子。湯気の暑さ、ご飯の匂い、二人の息が湿度と共に空気を満たす。それから、永遠のような昼寝の時間。美しい自然の中で淡々と流れる二人の時間。そのそばで、不在の誰かが自分のいない世界を見守っている。
キム ハケン(アニメーション作家)